取材記事・インタビュー記事は事前にアウトプット(掲載)のイメージを固めておくことが大切

取材記事では、取材する前の段階で、あらかじめアウトプットをどのようにするのかを固めておくことが大切です。このポイントについて知っているのと知らないのとでは、仕上がりの原稿に大きな違いが出てきます。

これはインタビューに限らず、さまざまな記事を書くときに共通のポイントと言ってもいいでしょう。

仕上がりの記事の良し悪しを決める、事前のアウトプット・掲載イメージを固めておくことの大切さについて解説します。

取材記事は、相手任せで取材しても良い記事にはならない

あらかじめアウトプットを固めておく、といっても、文字数やタイトルをなにがなんでも事前に決めたこれ以外のものにはしない!ということではありません。

自分の中で、
自分が書く原稿が、どんな形で掲載され、読者が読むのか、というイメージを持って取材に臨む、
ということです。

取材記事を制作しようという場合には、必ず目的があるはずです。

「広報誌に社員の声をインタビューとして載せたい」
「取引先の声を導入事例として載せたい」
「新卒採用のためのWebサイトに我が社の事業内容を載せたい」
など。

この目的をしっかり持っておくことで、どのようなインタビュー取材が必要なのかの方向性が、自ずと定まってきます。

コミュニケーションを活発化するような質問事項を戦略的に用意する

取材音目的を達成するためには、インタビュー取材という工程を経て、企画意図に添った記事に仕上げていく必要があります。
そのため、ほとんどの場合、あらかじめ用意した質問を相手に投げかけるQ&A形式で行うわけですが、ただ漫然と質問事項を用意するだけでは、アンケート記入用紙に回答してもらった程度の、薄い記事にしかなりません。

そこで、より深いエピソードを盛り込んだり、相手の個性が反映されたりする記事に仕上げていくには、質問事項を戦略的に用意しておきます。
インタビュー取材の現場という限られた時間の中でコミュニケーションを深めていくことにより、インタビューを受けている相手がリラックスし、長年の親友と話すような気持ちで語り始めたら、思いもしなかったような話も引き出せることになるでしょう。

1つのテーマについて聞き出すためには多方面から攻める

ただ漫然と「仕事のやりがいはなんですか?」「御社の事業の強みはなんですか?」などと質問しても、型通りで面白みのない(つまり、読者にとってもつまらない)無難な記事が出来上がってしまいます。

これを避けるためには、1つの聞き出したいテーマに対して1つの質問だけを用意しておくのではなく、さまざまな角度からの質問を投げかけることが大切です。

例えば、「好きな食べ物は何ですか?」という聞き出したいテーマがあったとします。アンケート記入用紙にこんな質問があったら、ほとんどの場合「すき焼き」とか「イチゴのショートケーキ」といったひとことの回答で終わってしまいます。

そこで、質問の角度を変えて「これさえあればご飯がすすむというおかずは?」「よくランチで出かけるお店はどんなお店?」「小さい頃に苦手だった食べ物はある?いまも嫌い?」「肉派?魚派?」「お酒は飲む?なんのお酒が好き?」といった具合の質問を用意しておきます。

深彫り質問で、相手の答えにある背景に迫る

また、現場で出た答えに対して「すき焼きの具の中ではどれが一番好き?」「好きなのは家庭で作るすき焼き?それとも好きなお店がある?」「すき焼きが好きになったのはいつ頃から?」といった深彫りするような質問をたたみかけることで、エピソードにもさまざまなバリエーションが生まれてきます。

たったひとことで済む好きな食べ物についての話題も、こうして角度を変えると、より具体的になり、広がりが出てきます。同じ「すき焼き」が好きな人が10人いたとしても、10人それぞれに「なぜその食べ物が好きなのか」という背景が異なります。
インタビュー取材では、その背景にまで迫ることが大切なのです。

同じ記事でもアウトプットの掲載形式はさまざま

記事、とひとくちに言っても、アウトプットの種類はさまざまです。
掲載する文字数、写真の掲載枚数、写真キャプションの有無、タイトルや中見出しの付け方、掲載記事の使われ方など、多種多様です。

取材をする前に、アウトプットはこういう形式になる、ということを固めておいて、そこから逆算してインタビュー取材を組み立てることが肝心です。
主なアウトプットの形式には次のものがあります。

Webサイト(オウンドメディアなど)

Webサイトの場合、文字数や写真点数、見出しの数、グラフやイラストなどの図版の数に制限がありません。ただほとんどの場合、あらかじめ設計されたフォーマットがあります。
印刷物に比べてボリューム制限がゆるいのが通常ですが、サイトのトンマナや仕様に添わない記事にならないよう、事前に確認しておく必要があります。

ニュースリリース

広報部門がある場合は、必ずフォーマットが決まっているのがニュースリリースです。例えば、メディアに取り上げられることを想定して、最初の数行でリリース内容がわかるように新聞記事のようなまとめ方をしたり、主語はこの形式をとる、段落ごとにそのまま使用できるように情報の粒度に濃淡をつけたりする場合があります。

社内報や会社案内など紙の印刷物

印刷物の場合、掲載できるボリューム(版面や段組みといって、1ページや1/2ページに入る文字数や写真のサイズ)が決まっています。中見出しを1つ増やせば、その分、本文の文字数を減らす必要がありますし、掲載できる写真や図版の点数にも限りがあります。

導入事例や製品・商品資料など

営業先や顧客に対して自社をアピールする目的で法人向けに制作される記事のため、ある程度、業界で長年採用されてきたフォーマットや慣習があります。これは悪い意味ではなく、この情報を掲載しないと、営業先に自社のサービス・商品の良さを伝えられない、という要素があるということです。

インタビュー取材記事の文章形式には4つの種類がある

記事のアウトプットの形式ということから言うと、文章の書き方にも注意する必要があります。同じインタビュー取材でも、最終的なアウトプットの段階では、目的に応じてさまざまな書き方が考えられます。

一人称(ゴーストライター)形式

記事の中に、インタビューするライターや編集者は登場しないで、インタビューを受けた人が自分で話しているような文調で記事をまとめる形式です。取材する側は、いわゆる「ゴーストライター」として、相手の代わりに文章を書くという形になります。
企業の代表取締役メッセージ、自叙伝などがこれにあたります。

対談形式

インタビュアーの質問を文章の中に入れて、それに相手が答えるという形で文章をまとめるQ&A形式です。読者にも、誰かが質問して答えているのだな、というのが明確に伝わります。
一般的なインタビュー記事、対談、座談会などがこれにあたります。

インタビュアーが主語となる形式

インタビューされた相手の答えは、かぎかっこでくくられた部分のみで、それ以外の部分は取材するライターや編集者といった書き手が主語となっている文章です。インタビューされた相手の言葉はその記事のパーツに過ぎず、書き手の選択や主観が反映されやすくなります。
新聞や雑誌などのジャーナリストのレポート記事、それに準ずる記事がこれにあたります。

第三者目線の形式

記事で伝えたい内容を客観的に文章にする形式です。取材対象側の視点にも、取材する側の視点にも立たない中立性を演出したい際に活用されるのが一般的です。
事実を情報として読者へ伝える目的の、ニュース記事や企業のニュースリリースなどがこれにあたります。

企画趣旨を記事化できるようアウトプットを固めておこう

記事制作をする場合には、どのようなアウトプット(掲載)になるのかを考えてインタビュー取材に臨むことが大切です。良い意味で、企画意図に添った記事に仕上げるためには、避けては通れないポイントです。

どのようなアウトプットになるのか(アウトプットにするのか)は、編集者やライターの腕の見せどころです。アウトプットとそれに対応したインタビュー取材を自由自在に操れるようになれば、企画意図に添う記事を仕上げることができるだけでなく、読者の心に響き、付加価値が生じるプロの記事制作ができるようになります。