導入事例記事の書き方のコツ|自社サービス・商品の魅力を伝える事例取材ポイント解説

ここ数年、企業サイトで多くなっているのが「導入事例」記事のインタビュー取材です。Webサイトで気軽に見込み客へ自社サービスをアピールできるようになったことが理由のひとつでしょう。

企業が自社のサービスを利用してくれている顧客へインタビュー取材を行い、導入効果や感想、具体的な改善結果を数値で表現するのがよくある形式です。

「導入事例」記事は、他のインタビュー取材と同様に、何をどのように読者に伝えるのか、ストーリーの設計が大切です。そのポイントを紹介します。

「導入事例」記事を書く最大のポイントはストーリー設計

企業の導入事例記事では、ほとんどの場合、企業が企業に対して販売している(BtoB)のサービス・商品をアピールする目的で作られています。そのため、一般消費者・生活者向けに販売している(BtoC)サービス・商品とは異なる視点でのアプローチ方法が必要です。

アプローチ方法として設定しておきたい重要なテーマは次の4つです。

MEMO
  1. 導入背景:サービス・商品を顧客が導入しようとしていた背景
  2. 導入課題:そこにはどのような課題があったのか
  3. 導入効果:実際にサービス・商品を導入してみて、どのような効果があったか
  4. 今後の展望:今後のビジネス・事業展開の展望

これらのテーマに沿って記事にストーリーを作ることで、自社が訴求したい”強み”を、的確に見込み客へ伝えることができます。
少し詳しく見ていきましょう。

1.導入背景:サービス・商品を顧客が導入しようとしていた背景

顧客が自社のサービス・商品を導入してくれた背景には、記事を読む見込み客にも共通している背景が何かしらあるものです。
背景は当然、次項で説明する課題とは切り離せない面もありますが、ここでは、課題よりも広い視点で見てみると良いでしょう。

例えば、「社会的に働き方改革が進む中で、自社も対応を迫られていた」、「オープンイノベーションへの対応が業界内で急激に進んでいた」など、日本市場全体やグローバルな動きは見逃せない背景です。
そのような顧客が抱えるビジネス環境、つまり背景があるからこそ、「何かを変えなければならない」「これまでとは違う取引を始めなければならない」という要請が顧客企業の中で生まれてきているはずです。

2.導入課題:そこにはどのような課題があったのか

次の導入課題では、1の背景で触れた情況の中で、現状と目指すべき姿のギャップから生じた、顧客が抱えていた問題や悩みがどのようなものであったのかをまとめます。
課題の中には、顧客が解決したいビジネス自体の話、解決するにあたっての社内的障壁や対外的な障壁の話、取引先選定の話と、いくつかの視点で語ることができます。

当然この課題も、見込み客から見れば「ああ、それうちの会社も同じ悩みがある」とか「異業種だが共通する課題がある」などの共感を発見することもあるでしょう。そのため、できるだけ具体的であることが大切です。

3.導入効果:実際にサービス・商品を導入してみて、どのような効果があったか

実際に自社のサービス・商品を顧客が導入してみての感想や具体的な効果をまとめます。
導入前の見積もり・提案、契約、導入直後、導入からしばらく経過してからの状況と、時系列に沿って整理することで、見込み客が「もし自社で導入した場合にはこうなるんだな」と、自分ごととして導入イメージを追体験することができます。

インタビュー記事として構成する場合は、苦労した点や記憶に残っているエピソードなどを交えると、よりリアリティが増して読み物としてもオリジナリティが出てきます。やり過ぎかも?と思うくらいのキャッチコピーをつけても、ウソがなければ意外としっくりくるものです。

また、ウソがない、ということと通じますが、プラスのことだけでなくマイナスの出来事があれば、それも正直に盛り込んでおくのがおすすめです。
自社が弱い点、ボトルネックとなっている点を明らかにしておくことで、顧客の抱くイメージとのギャップがあらかじめ埋められる効果や、余計なクレームの回避にもなります。

4.今後の展望:今後のビジネス・事業展開の展望

ストーリーの最後は、顧客が考える今後のビジネスの展望についても取り上げましょう。
自社のサービス・商品を導入することで、顧客が抱える課題が解決したばかりではなく今後の新しい展開につながった、という話があれば、見込み客にとってもプラス材料になります。

ストーリー設計をすることで、社員のモチベーションが上がる効果も

たまに簡単なアンケート回答やQ&A形式の導入事例記事を見かけることがありますが、あれはアンケートであって、理想とする導入事例記事とは似て非なるものです。

導入事例記事は、営業マンの代わりに自社を売り込むツール

「お客さんに、簡単にアンケートに答えてもらって、写真を撮って載せれば大丈夫でしょう」
「営業マンがお客さんにインタビューしたテープがあるから、それで導入事例を作れる?」

そんな話を聞くこともありますが、まったくのナンセンスです。そんな言い分をする企業の担当者は、何かノルマで仕方なく事例記事を作ろうとしているか、自社サービス・商品に愛着がないか、顧客をバカにしているとしか思えません。

インタビュー取材で記事を作る導入事例は、営業マンの代わりとなって自社のサービス・商品を売り込むツールです。導入事例記事を作ることで、何を世の中へアピールし、見込み客の心に何を届け、新たな顧客になってもらうのか。担当している事業のマーケティング戦略やコンテンツ戦略なのです。

導入事例記事は、顧客の生の声を聞ける貴重な機会

また、事例紹介記事を作ることは、じつは営業マンや社内のスタッフがこれまで知らなかった顧客の生の声を聞くことができる貴重な機会でもあります。
例えば、「いつも●●さんの会社のスタッフは、丁寧な対応をしてくれて、急ぎの時でも臨機応変で助かっています」「あの製品が抱えていた課題を解決した●●のような創意工夫には感心しました」といった顧客の生の声が事例紹介に触れられていれば、業務にかかわった従業員の心にも響くはずです。

特にライターやカメラマンなど第三者の立場の人間を入れると、これまでには聞けなかったような裏話や、新たな受注につながる話題などが出てきます。「取材を受けている」という意識が顧客の中でも良い方向に作用して、そうしたプラスアルファの効果があることも見逃せません。
もちろん、そこを引き出すのがライターや編集者の腕の見せどころと言えるでしょう。

導入事例記事を作る前に必要な準備とは?

導入事例記事を実際に取材して、文章を書くときには、いくつかのコツがあります。業種や掲載媒体によっても考え方は多種多様なのは当然ですが、どんな場合にもあてはまるコツを紹介します。

その前に。
導入事例記事には欠かせない大前提として、次の2点について改めて自問してみましょう。

自社のサービス・商品の強みや訴求ポイントは何か

意外と多いのが、そもそも導入事例記事を書くために必要な、何を自社が売り込んでいきたいのか、アピールしたいのかが整理されていないケースです。
「そう言われてみても、うーむ」と悩むようであれば、顧客の課題や市場での自社の立ち位置を客観視できていません。まずは、自社の得意領域を整理することから社内で議論してみてください。

導入事例記事は継続することが大切

導入事例は、見込み客への営業ツールであることは先に触れました。そのため、1社よりも2社、2社よりも3社と、事例が多ければ多いほど、見込み客の心にひっかかるキーワードが多く用意できることになります。

自社のサービス・商品がターゲットに設定している業種や事業規模、課題解決ポイントに沿って導入事例があることがベストです。1か月に4記事は制作していく、1年は継続して記事を制作する、といった予算や体制準備をして(心構えでもOK)臨むのがおすすめです。

まずは記事のテンプレートを作ってみる

次に、実際の記事制作にあたってのコツをいくつか紹介します。

まず、インタビュー取材をする前に(できれば企画段階に)、掲載するWebサイトや印刷物(パンフレットやチラシプリント)に合わせて、ラフデザインやテンプレートを作ると良いでしょう。
見出し、メイン写真、企業プロフィール枠、導入背景や導入課題を分かりやすく伝える枠、担当者へのインタビュー、まとめ文章、自社のサービス・商品紹介へ誘導するリンクやパーツ、といった具合に、パーツごとで良いのでラフデザインを描いてみると、出来上がりのイメージがより鮮明になってきます。

1記事(1社)当たりの訴求テーマを1個に絞る

プロの視点で行くと、1記事(1社)の導入事例で訴求するテーマは、できるだけ1個に絞るのがおすすめです。
これやあれや良い点があってどれも掲載したい、という気持ちも分かりますが、残念ながら読者には作り手が思うほどの情報量は伝わりません。

事例で紹介する顧客のケースで最も効果が出た点や、自社が特に訴求したいアピールポイントに焦点をあてることで、ぶれることなく読者にそれが伝わります。
それによって、記事タイトル、中見出しやキャッチコピーにまとまりが生まれ、ストーリー仕立てのライティングワークに落とし込むことが可能になります。

具体的な構成に必ず入れておきたいパーツ

導入事例の記事の中には、パーツとして必ず入れておきたい「おきまり」のようなパーツがあります。読者への信頼度が高まったり、信憑性を担保する意味合いも強くあります。

MEMO
  • 簡単な企業プロフィールを掲載する
  • 業種・業態・ジャンル・企業規模などを掲載する
  • 導入顧客の担当者の写真掲載枠を作っておく
  • 導入背景、導入課題、導入効果、今後の展望を掲載する枠を作っておく
  • 導入顧客の担当者の「声」をインタビューで掲載する
  • 自社サービス・商品紹介への導線を意識する

「導入事例」記事が持つポテンシャルを最大限に活かして!

企業向けの取材インタビューは、Webサイトの登場により、手軽に企画して、掲載できるようになりました。ただ一歩踏み込んで考えてみると、なかなか骨のある仕事です。

手軽にとりあえずやってみる、というスタンスもとても重要ですが、それだけでは導入事例記事が持っている能力を最大限に活かしているとは言えません。せっかく取り組むのであれば、ぜひこの記事をはじめ、競合企業の導入事例記事などを参考にして、本気で取り組んでみてはいかがでしょうか。